認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な方々は、不動産や預貯金などの財産を管理したり、身の回りの世話のために介護などのサービスや施設への入所に関する契約を結んだり、遺産分割の協議をしたりする必要があっても、自分でこれらのことをするのが難しい場合があります。また、自分に不利益な契約であってもよく判断ができずに契約を結んでしまい、悪徳商法の被害にあう恐れもあります。このような判断能力の不十分な方々を保護し、支援するのが成年後見制度です。
成年後見制度は、大きく分けると、法定後見制度と任意後見制度があります。
任意後見制度と法定後見制度があります。
本人の判断能力が不十分になった後、家庭裁判所によって、成年後見人等が選ばれる制度です。本人の判断能力に応じ て、「補助」「保佐」「後見」の3つの制度が用意されています。
法定後見制度の3種類
※1 成年後見人等が取り消すことができる行為には、日常生活に関する行為(日用品の購入など)は含まれておりません。
※2 民法13条1項記載の行為
※3 本人の居住用不動産の処分については、家庭裁判所の許可が必要となります。
※ 保佐制度及び後見制度の利用により、本人が一定の資格や地位を失う場合があります。(医師、税理士などの資格や会社役員、公務員などの地位を失うなど)。
※ 保佐開始の審判、補助人に同意権・代理権を与える審判、保佐人に代理権を与える審判をする場合には、本人の同意が必要です。
そうすることで、本人の判断能力が低下した後に、任意後見人が任意後見契約で決めた事務について、家庭裁判所が選任する「任意後見監督人」の監督のもと本人を代理して契約などをすることによって、本人の意思に従った適切な保護・支援を行うことが可能になります。
任意後見契約は判断能力が十分にあるときに締結しますので、実際に本人の判断能力が低下し、後見人として就任する時期は、契約締結から何十年後というケースも考えられます。
任意後見契約締結後、任意後見契約が発行するまでの間、後見人予定者と本人との間の連絡を定期的にとっていなければ、本人の判断能力が低下した時期をすぐに知ることができません。
そこで、任意後見契約締結後、任意後見契約が発効するまでの段階として、見守り契約、財産管理委任契約があります。
また、本人が亡くなった後の葬儀の手配、遺産の整理等死後の事務について決めておくには死後事務委任契約、遺産の配分を決めておきたい場合には遺言書の作成をしておく必要があります。
申立てができる人は、本人、配偶者、4親等内の親族、成年後見人等、任意後見人、成年後見監督人等、市区町村長、検察官です。
4親等内の親族とは、本人や配偶者の子、孫、親、祖父母、兄弟姉妹、おじ、おば、甥、姪、本人のいとこなどです。
なお、自分一人で申立てや手続を進めていくことに不安を感じる方は、司法書士や弁護士に相談することをお勧めします。
次の事由に該当する方は、成年後見人等になることはできません。
上記以外なら、成年後見人等になることはできますが、最終的には裁判所が成年後見人等を選任します。
成年後見人等申立書に「成年後見人等候補者」という項目があります。裁判所はその成年後見人等候補者を考慮はしますが、必ず成年後見人等候補者が選任されるわけではありませんのでご注意ください。また成年後見人等候補者が選ばれなかった場合には、専門職後見人(司法書士、弁護士等)が選任されます。
成年後見人は、一度申立てを行い、審判が確定されると本人の財産及び生活の全般にわたって、本人が亡くなるまで仕事をする責任・義務がありますので解消されることはありません。
後見開始の申立ては、審判がされる前であっても、家庭裁判所の許可を得なければ、取り下げることができません。
(家事事件手続法121条1号)これは、自分の希望する後見人の候補者(例えば、申立人自身)が選任される見込みがなくなったことを知った申立人による濫用的な取下げを防止して、本人の利益保護を図る趣旨だからです。
(福祉関係者による本人情報シートの作成、医師に対する本人情報シートの提供・診断書の作成など)
※ 後見開始の審判に対しては、審判に不服がある本人
、配偶者及び4親等内の親族等は、この2週間の間に不
服申立て(即時抗告)の手続をとることができます。